国境の村の人生


2008.1.18〜2.2 チリ
チレチコ → コイハイケ → チャイテン → プエルトモン → チロエ島 → ジャンキウエ湖 → カーデナルサモレ峠 
Chile Chico → Coihaique → Chaiten → Pt.Montt → Isla Grande de Chiloe → Lago Llanquihue → Paso Cardenal Samore)

 国境を隔てて直ぐ隣にあるチリ側の町チレチコは産業も何も無いように見える小さな村。こんな所にも小さなスーパーがあり、雑貨屋があり、ガソリンスタンドがある。小さなスーパーは直ぐ近くに何軒もあり、どこを覗いてもたいした品揃えも無く同じような商品を置いている。これで生計が成り立つのなら僕は何をやっても生活していけるだろう。人間の生命力の強さには驚かされる。通りでキャンプ場は何処かと自転車の人に聞くと、その男は“俺の家でキャンプすればいい”と言って貧しい小さな家に案内してくれた。家には明るくて可愛く利発そうな15歳の娘がいた。しばし会話を楽しんだ後、“じゃあ私アルゼンチンのお母さんの家に帰るね。会えて嬉しいわ。”とお別れのハグをしてくれた。母親はアルゼンチン人で離婚したのだろう。男と2人になると、どうも変なことに気付きだした。彼はアル中なのだ。どこか違う場所へ行きたかったけれど、もう荷物も降ろしテントも張ってしまっていたので諦めた。1人で街に出かけて湖畔で村の若者たちと仲良くなって会話を楽しんだり、インターネットカフェで時間を潰して夜遅くに戻ると、村の仲間数人を相手に安いワインで酒盛りの最中だった。呂律が廻らず同じことを繰り返す彼に、仲間たちも諦め顔で1人2人と帰っていった。昔は彼もまともな男だったのに違いない。失業、家庭崩壊、酒、はたまた他の問題、どんな順番で何が起きたのかは分からないが、彼の人生がこの貧しい国境の村の孤立した寂しげな雰囲気に溶け合うような気がした。