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   はじめに


僕は文章を書くようなガラではない。そもそも中学校の読書感想文の宿題以来文章らしい文章を書いた記憶があまりないし南米旅行の記録を書くことなど全然考えていなかった。本来は家の外で体を動かしていないと死んでしまいそうになる、まるで回転するローラーの中を走り続けているモルモットみたいな生き物だ。南米をオートバイで5ヶ月弱、決して大した冒険とは思っていないし僕よりも超人的な旅をしている人は世界にたくさんいる。だから偉そうな旅行記を書くのはおこがましく思う。それなのに今回これを書くことにしたのは旅先のチリのサンチアゴで出会った、今ではとても尊敬する友人になったウイリアムさんの勧めがきっかけだった。“君のような体験をする人は滅多に居ないからいつか本を書くべきだよ”。

旅の途中、この旅を応援してくれていた友人達などに旅先の出来事やその時考えたことなどを写真を添えて時々メールをしていた。すると思いもかけぬ反響、感謝、激励のメールを頂き嬉しかった。技術者として物作りを通じて人に感動を提供してきたつもりだったけれど、それ以外の方法は頭に浮かばなかった。そんな僕の様な素人でも文章で人に感動や楽しみを与えることができる事は新鮮な喜びだった。

自然の神秘を目の前にしたとき、人との素晴らしい出会いをしたとき、胸の奥に熱くこみ上げてくるものが心の世界を広げてくれる。それは南米の秘境を訪ねなくても日常の中に転がっている出来事からも感じられる誰しもが経験する感覚だ。その感覚を忘れないように人は日記に残したり写真に残したりする。その感動を本や写真集などで人に伝えることが出来る人達がプロの作家であり写真家達だ。真似事をして見ようと意を決して書き始めると、表現力の無さ、遅々として進まない筆の遅さ、つまりは思考回路の遅さに呆れてしまう。感情の趣くままに撮りまくった写真も味わった感動のほんの一部しか捉えきれていない。やはりプロとは程遠い素人だと思い知った。それでも部屋に篭りまるで浪人生のような数ヶ月を過ごしたのは、旅で味わった幸せ、感動の一部でもとりわけ僕の心を支えてくれる友人達、親、旅でお世話になった方々に恩返ししたいと思ったからだ。

 これまで世界中を自転車やオートバイなどで見て周り、滞在し、働き、もうこれ以上の感動は無いかもと思えるくらいの経験をたくさんしてきたけれども、南米の印象はそれらに勝るとも劣らない強烈なものだった。自然も人も他には無い驚くべき個性を放っている。旅で見たこと、感じたこと、考えたことに加えて、話は脱線して日頃僕が考えていること、日本のこと、世の中のこと、過去の旅の回想なども交えながら南米の魅力や南米を通して見えること、オートバイの魅力などを少しでも伝えることができたらと思っている。乱筆、言葉足らずの文章だが、一笑に付して楽しんでもらえたらとても嬉しい。

 また、このホームページが今後南米をオートバイなどで旅行しようとする人の参考になったり、はたまたここを通じて新しい楽しい仲間が出来たりしたら望外の喜びだ。