天使の降りる湖


2008.3.2〜3.19 ボリビア
アバロア自然保護区 → ウユニ塩湖 → ポトシ → スークレ → サンタクルス → オキナワ → サンタクルス → サンホセデチキート→ロボレ→プエルトスアレス
Avaroa natural reserva → Salar de Uyuni → Potosi → Sucre → Santa Cruz de la Sierra → Colonia Okinawa → Santa Cruz de la Sierra → San Jose de Chiquitos → Robore → Puerto Suarez)

アルゼンチンへ引き返すように27号線をJama峠方面に登ってゆき左に富士山のような形をしたLicancabur火山(5916m)を見たところで左折する。標高2400mのサンペドロデアタカマから道路脇に雪が残る5000m近くまで上がってきたので途中再びエアクリーナーを外さなければならなかった。左折した途端に舗装が無い酷い悪路になって直ぐにボリビア国境が現れる。しかしここは無人だったので更に車の轍をたどって進むと綺麗な湖の畔に今度こそ本当の国境事務所がある。“バイクでよく来たな。”と言って国境係官に握手で迎え入れられた。イメージしていたボリビア人の対応と違ったので肩透かしを食らった。入国税15ボリビアーノとアバロア自然保護区の入場料30ボリビアーノを払った。この一帯は保護区に指定されているが、標高5000m前後の土地なのでどのみち人は殆ど住んでいないし、たまに見かけるツアー客のランドクルーザーくらいしか車は居なかった。

アルゼンチンのサルタからチリのアタカマ砂漠を経てボリビアのウユニへ抜ける標高4000mを越えるルートの美しさは言葉では語りつくせない。僕はいつも人が選ばないようなルートを選ぶので、この間1日数台の車しか見ない日もあった。

山を背にした絵のようなLaguna verde湖、悪魔の炊事場のようなドロドロとした間欠泉、遠くの山に何となく消えていく道らしき跡、赤い湖にフラミンゴが群れるLaguna Colorada湖。どの瞬間、どのアングルを捉えても期待を裏切らない夢のように美しい世界でカメラが手放せない。しかしファインダーの区切られた景色は実物の美しさを台無しにしてしまいそうだから脳裏にしっかり焼き付けようと何度も立ち止まった。走っている時もごろごろしている尖った石でパンクしない様に気を配り、砂利でハンドルが取られるのを堪えたりしながらも全ての景色を見ようと横や後ろにも首を回らした。

 国境で“税関は別の場所にあるから”と教えられ翌日訪ねた標高5020mの税関(ADUANA)のおじさんはいい人だった。チリ税関との不法入国騒動の後だったからやや緊張していたのだが、誰もいない事務所から声をかけると廊下の奥の部屋からタオルで下半身を隠した真っ裸のおじさんが出てきて“ちょっと今シャワー浴びるから待っててね。”と言う。“ツアー以外で国境を越える一般の車は1日1台か2台しかいないから暇なんだよ。”と言ってゆっくりとバイクの書類をタイプしてボリビアの書類を作ってくれた。その間カメラの電池を充電させてもらったり、少し急激に登りすぎたのか頭痛がしたので高山病の薬をくれたり、彼の家族の話を聞いたりと、お役所とは思えない雰囲気だった。ここには天使が降りてきそうな景色があり、それに似合う人達がいる。