|
優雅な中庭のあるホテルで目を覚ます。2月27日、この日は少しだけ特別な日だ。誕生日だから。自由な人生を選び、偶然南米旅行に来て、こんなにのんびりとした素敵な村でこの日を迎えられて最高だと思うし、これまでの人生の選択の全てに満足している。あとは誰か祝ってくれる人が居れば何も言う事は無いが、幸運な僕にはそんな機会にも恵まれた。
Cafayateを出て暫くしたところにある観光客も行かない静かなワイナリーを訪ねたとき、受付の女の子はじっくり時間をかけて中を案内してくれた。葡萄をお土産に持たせてくれたり、試飲もさせてくれて全て無料。ちょっと申し訳なくて買ったワインは1本たったの6ペソだった。暫く彼女とお話をしていて年齢の話になり、今日が僕の誕生日だと分かると彼女はハグでお祝いをしてくれた。
この日の目的地Cachiまでは160kmしかなかったけれど、カーブの連続する狭い悪路が続き、カーブを曲がるごとに異なる表情を持つ山や岩が現れるので、そのたびに写真を撮ったり休憩をするので全然前に進めなかった。道端で休んでいるあるときに久しぶりに見るバイク旅行者の集団5台に抜かれた。彼等が休んでいるときに今度は僕が抜き返した。手を上げて挨拶をする。その彼等とCachiのガソリンスタンドで再び一緒になり一緒にホテルに泊ることになった。ホテルは部屋が少なかったのでベッドがたくさんある部屋で皆と一緒に寝ることになった。彼等はブエノスアイレスから来たアルゼンチン人で超特急でマチュピチュを目指す旅の途中だった。アルゼンチンの習慣は分からないが、ブラジルでは誕生日に周りの人にプレゼントを渡す習慣があるので僕が彼等にワインを御馳走すると、彼等は逆にビールと食事を御馳走して祝ってくれた。
Cafayateの夜も良かったが、Cachiは更に良い。Cafayateよりも観光客はずっと少なく静かな大人の雰囲気が漂う。街並みも人も柔らかい光に包まれた静かな時間の流れの中にある。深夜に皆で歩いて行った広場の前にあるカフェの120年前のスピーカーからは、くぐもった優しい音が聞こえる。人と一緒にいる最高の夜。最高の誕生日。