乾燥地帯の大雨


カタマルカ州に入り、素朴な村々を抜けて日没を迎える夜8時にTinogastaという割と大きな町でホテルに投宿した。アルゼンチンに戻ってから毎日降られていた雨は深夜にやってきた。キャンプにしないで助かった。
 翌日、ガソリンスタンドのガソリンが入荷する昼過ぎまで待ってから60km離れた山の中にあるFiambara温泉へ行った。温泉の手前の村で1週間この村に滞在しているという50歳のドイツ人ライダーと知り合い一緒に温泉に向かう。途中1箇所川渡りがあったが、昨日の夜まで毎晩降り続き渡れない日が続いたそうだ。
 温泉は管理人曰く“温泉始まって以来”の水害に見舞われていた。昨晩の激しい雨で上流の土砂が流れ込み、いつもは透明だという湯は茶色く濁り、底には泥が堆積していた。昨晩ここでキャンプをしていた家族達は疲れた様子で荷物を干していた。折角来たのでドイツ人と暫く温泉を楽しんだ。景色も素晴らしいし温度も丁度良い。水が透明だったら尚良かっただろう。
 夕方帰る頃になると快晴だった天気も崩れて再び雨。Tinogastaの街に戻ると通りが川になる程の大雨だった。普段雨が降らないこの地方の大雨に人々は翻弄されている。旅の間あちらこちらで見聞きした異常気象。この半世紀で人は人生の中で受け入れられる変化を超える変化を目の当たりにしている。
 
まだ日没まで時間があったので先を急ぐ事にして街を出て少し走ると、雨が降った痕跡も無く晴れている。どうやら山が西側にあるときは雨に降られ易いような気がする。その後左折して40号線に入り北上を始めると再び西側に山がある。案の定雨。道路が洪水で分断され車が何台か渡れずに立ち往生しているところに出くわした。皆で濁流を諦め顔で覗いている。僕が歩いて深さと川底の状態を探ってからバイクで渡ると皆から感謝の言葉をもらった。それを機に次々に僕の通った場所を車も渡り始めた。この時は凄い経験をしたと思っていたが、翌日に数え切れない程もっと大きな川渡りをする事になるとは思っていなかった。