旅に必要なガソリン容量   


 知らない土地で道を選びながら走るのはとてもわくわくするけれど、知らないだけに大変な目に遭うこともある。アズールを離れて間もなく、国道3号ではなく田舎道を走ってみようと思い、51号へと曲がり76号、33号を経由してバヒアブランカ(Bahia Blanca)へ抜けるルートを目指した。国道3号という幹線道路でも交通量は少ないのだから田舎道は殆ど車に会わない。だからパラグアイで中国製コピー部品で直したフロントブレーキが再び壊れて使えなくなってもあまり気にしなかった。ブレーキを使う機会が殆ど無いのだから。
 それよりも気になりつつあったのはガソリンスタンドが見当たらないことだった。200km以上走ってようやく見つけて飛び込んだら、もう廃業したとのこと。車を見かけないのだからガソリンスタンドが潰れるのも当たり前か。果てしなく続くパンパの中で熱射の下バイクを永遠押し歩くことを想像するとぞっとする。燃費と忍耐力のバランス限界の60km/hで走り過去最長の270km無給油でガソリンスタンドに駆け込んだ時にはタンクは空っぽだった。燃費27km/lは上出来だと思ったけどもうこんな思いはしないようにとホルヘから貰って荷台に縛ってあった10リッターの予備タンクにもガソリンを入れた。これで540kmは無給油で走れるようになったことになる。ガソリンスタンドを見つけたら必ず満タンにする、ガソリンスタンドでは次のガソリンスタンドまでの距離を聞く、次の街までの距離を頭にいれておく、これらがガソリン容量の小さなバイク旅行には大切だ。これらを実践すれば500kmくらい走れるガソリン容量があれば南米は大体何とかなるだろう。
 それにしても速度感覚というのは不思議なもので市街地で60km/hならそこそこに感じるけれど、360度地平線の見えるパンパにいると殆ど止まっているように感じてしまう。