列車の旅


 貨物駅では予想外に苦戦した。ありとあらゆる物を載せようと人がごった返していて、仕組みがよく分からない僕は、窓口が閉まるぎりぎりに何とかバイクを列車に載せる手続きを終えた。バイク運賃はべら棒に安かったけれど(90ボリビアーノ=1260円)荷物を運ぶ人夫の手数料を直接交渉するのが面倒臭い。そもそも手数料を払う必要があるのかも分からないけれど、相手の要求100ボリビアーノに対して20(280円)まで下げて決着した。オキナワの人に知れたら“タカシ騙されたね”と言われるかも知れないけれど時間も無かった。
 次は旅客駅で切符を買うのだが今度も長い列。日系人とは違う雰囲気の若くて知的な感じのアジア女性がいたので声をかけてみたらやはり日本人だった。JICAボランティアという国の制度でボリビアに滞在中で来週の旅行の切符を買いに来たのだとか。彼女はスペイン語が話せるので親切にも僕の切符も一緒に窓口に訊ねてくれたのが大助かり。数日前に1人で窓口で相談したときの駅員の険悪な態度とは雲泥の差。言葉の差だけとも思えない。男が女性に弱いのは万国共通のようだ。最初は満席と言われたのに途中から1等座席が出てきて無事にバイクと同じ列車に乗れることになった。彼女に感謝。
 座席は特等、1等、2等の3つに分かれている。値段は凄い差があるけれど特等でもとても安い。特等は8時間の旅で53ボリビアーノ(740円)。1等は指定席のはずなのに途中から立ち客が出る満員。床に子供が寝ていたりもする。サングラス、本、色んな食べ物などの物売りが居て最初は面白かった。
 そのうちなんだか昔中国を列車で旅した時の事を思い出す。得たいの知れない食べ物を食べて、ビンでも缶でも窓から外に捨てる光景も同じだ。中国では近くの席の人からザリガニとか芋虫とかを親切にも分けてもらって、断りきれずとても辛い思いをした。自分だけはゴミを外に捨てないように時々ゴミを回収に来る車掌に渡したら、車掌はまとめて窓から捨てるだけだった。
 大きな声で演説を始める客に回想から現実に引き戻される。そのうち田舎者の僕は雑踏の雰囲気に疲れてしまった。特等に空き席はないか見に行くとガラガラ。車掌は最初は車内で買う場合差額プラス10ボリビアーノの料金を払えば移動しても良いことになっていると言ったが、交渉で差額だけで良いことになった。立ち席がありなのに駅で最初に満席と言われたり、特等が満席のはずなのにガラガラだったり、つまりはボリビアのインフラはそんないい加減な感じということ。車掌に払った差額にしても車掌のポケットに入るだけの事だろう。
 特等は人が少ないから大分楽だけれど、快適という程でもない。ボロボロの席はバネが見えてギシギシ音がする。エアコンなどないから窓は全開だ。レールはガタガタで振動は酷く、スピードも遅くて各駅停車。SanJoseDeChiquitosまで265kmを8時間で走り夜の8時に駅に滑り込んだ。乗ってるだけで疲れる旅だったが旅情はあって面白かった。
 沿線の道路はやはり一部水没していたけれど、もくろみ通り、ここまで来ると乾いていてバイクで走ることが出来そうだった。

 
JICAの彼女のブログ http://blog.goo.ne.jp/hoshi-meguri/1