アコンカグアを越えて


2008.2.19〜3.1 アルゼンチン
ウスパジャタ → メンドーサ → ウスパジャタ → ラスフローレス → アグアネグラ峠 → ラスフローレス → ビラユニオン → イスキグアラスト/タランパヤ自然公園群 → フィアンバラ温泉 → カファヤテ → カチ → サルタ → コブレス 
Uspallata → Mendoza → Uspallata → Las Flores → Paso del Agua Negra → Las Flores → Villa Union → Ischigualasto/Talampaya natural parks → Termas de Fiambala → Cafayate → Cachi → Salta → San Antonio de los Cobres)

サンチアゴを北に抜けると直ぐに何も無い原野に戻る。60号線からアルゼンチンの7号線に抜けるルートはチリとアルゼンチンを結ぶ最も重要な幹線道路なのだがそこにはアンデス山脈が横たわり南米最高峰の6959mのアコンカグア山の横を通る険しいルートだ。日光イロハ坂をスケールアップした様なつづら折れが続き急速に標高を上げていく。遥か下を見渡すとのろのろと動く巨大なトレーラー達が豆粒の様に見える。国境の境界線は標高3200mの長いトンネルの中にある。この峠には昔鉄道が走っていたようで、線路や鉄橋、トンネルが朽ち果てた状態で放置されてうら寂れた雰囲気を演出している。あちこちで線路は土砂に埋まり、レールは曲がり、トンネルは崩落している。この線路を維持することは並大抵の努力ではなかったに違いない。今はトレーラー達にその役目を譲っていた。このルートは確かに車が多かったが南米の中では多いと思えるくらいで、1時間にせいぜい数十台見る程度の交通量だった。遠くに見えるアコンカグアはもちろんのこと、刻一刻と表情を変える近くの山並みも美しすぎる。主要幹線道路だからあまり期待していなかったのだが大間違いだった。これまでの経験から確信を持って言えるのは、アンデス山脈を跨ぐチリとアルゼンチンを結ぶルートは何処を選んでも素晴らしく、期待を裏切られることはないということだ。何度も何度もバイクを止め、山の中を歩き写真を撮りまくっていたので、このルートを自転車で越えているアルゼンチン人旅行者2人を何度も追い越す事になってお互い手を上げて笑いあった。

 アルゼンチンに戻って初めて現れる大きな村Uspallataはアコンカグア観光や国境越えの準備の観光客も多く、華やかな雰囲気だ。ここから7号線で南下しワインで有名なメンドーサ(Mendoza)には昼過ぎには着いた。大きな街路樹に囲まれ、カフェテラスが並ぶ通りは爽やかで気持ちが良い。フランス人の設計した大きな公園はこの街の雰囲気に合ってお洒落だ。僕もちょっとお洒落にカフェテラスで食事などしてみたが、どうもしっくりこない。やっぱり僕はこういうお洒落なところは似合わないのだろうか。それにやっぱりこういう場所は1人ではつまらない。いつかちょっとお洒落をした女性とでもまた来る事にしよう。田舎村Uspallataへ戻ることにして、今度は52号線という田舎道を通った。メンドーサを出て直ぐに強い雨が降り出した。暫く雨宿りして出発したが雲行きは怪しく途中もパラパラと降られる。細くくねくねした道になり温泉施設を過ぎると舗装も無くなり、いよいよ本格的な山岳路に入った。とても地図に載せるような道ではない。断崖絶壁を縫う道にはガードレールなど無い。峠の標高は2850mもありキャブレーションがとても悪くてギヤを落としてエンジンの回転を落とさないようにしないと前に進まない。南米の道は恐るべしだ。僕のFirestoneの良く出来ている地図を見る限りは簡単なルートに見えたが、実際には月の荒野のような道だった。