チリの中の日本  


湖を離れていくと植生が変わり始め、緑が濃くなっていく。空気も日本の様に幾分湿り気を帯びてくる。この辺りではかなり大きな町と呼べるコヒアイケに近くなると久しぶりに舗装路に出会う。山も低くて近くなり日本の田舎の風景にも似ている。スーパーの中にあるレストランの貝のスープや魚料理。料理の仕方や味付けは全然違うけれど、それでも魚介類をみると安心する。チリ人に日本人と似た印象をちょっぴり感じるのはそんなせいもあるのだろうか。プエルトアイゼンの街で宿探しをしているときに出会った夫婦は旦那の方が地元水産会社で働く日本人だったが、日本語で話しかけられるまで日本人だとは気付かなかった。

この日は結局スーパーの駐車場で知り合ったチリ人の家の綺麗な庭でキャンプをさせてもらった。トイレやシャワーを貸してもらうだけで他に何をしてもらうわけではなく、翌朝“じゃ、タカシ、俺仕事に行くから。良い旅を!”と言って連絡先を交わす事も無くお別れする。こういうさりげない出会いや親切が南米にはゴロゴロ転がっている。なかなか真似をできることではない。

翌日道の行き止まり、太平洋の港町チャカブコへ向かう。入り江なので静かな海だ。伊勢湾のような緑ある風景に伊勢湾フェリーの様に大きなフェリーが停泊している。その横には貧しい漁村の風景。やはりどこか日本の匂いがする。

 帰国後に新聞でコヒアイケの山が大噴火して噴煙をあげている記事を見た。町の人達は皆、軍に救助されたりして避難したらしい。それは最近では日本の三宅島の噴火を思い出させる。アンデス山脈を抱えるチリは日本と同じく火山の国、温泉天国の国でもある。温泉に裸で入る習慣の日本人には水着を着るのは初めは少し違和感があるが、最高であることには変わらなかった。